守 宮

先日珍しいお客さんが来店しました。

連日の暑さで通りの人影もまばらな中、ありがとうございます。

『ヤモリ…!?』

漠然とそう思ったのですが、あとで調べたらやっぱりこれはヤモリ。産まれて初めて見た。

皮膚は中身が透けて見えそうな位に半透明なベージュで砂のような擬態。鱗がないのだろうか、とてもマットで美しい。吸込まれそうな雰囲気。こういう雰囲気の生地はない。

頭が意外に大きい。いかにも蜥蜴らしい。目も大きくて、夜行性だから瞳孔は縦長だ。

でもやはり目にとまるのは指先でしょうか。未成熟な葡萄のよう。尖端がぷっくりしている。

最初は少しとまどいましたが、観察しているうちにだんだん愛おしく思えてきます。アニエスb.もきっとそう思ったのだ。

きっとぼくの気配は感じとっていたのでしょう。緊張してすくんでいるようでした。

もっと近くで観察しようと思い顔を近づけると、すごい速さで移動する。なんだやればできるじゃないか。

ぼくも慣れてきた、もう手で捕まえられるので草むらにでも逃がしてあげようと思う。かんねんしてしまったヤモリはおそるおそるぼくの掌に乗りました。

安全そうな草むらまでは掌から逃げないでくれよと両手で包んで運ぶ。けれど草むらに着いてもなかなかぼくの掌から移動してくれない。

変温動物だから暖かい掌が気に入ったのかもしれません。ますます可愛いやつだ。

でも仕事があるから後ろ髪ひかれながらお帰りいただく。ぼくは普段たいして仕事していないのに、いや、仕事をしているふりをしているだけなのに、こういう時だけ仕事しなければ、とか思う。これが日本人なのだろうか。

そんなことを考えつつ店に戻る。店は真っ白で、夜も明かりがついています。だからこの季節は虫が飛んでくる。

きっとそれを食べにきたのでしょう。

また会えたらいいなと思う。お客さんを見送るときはそう思う。

 

 

 

 

 

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