貯蔵

長い休み明けに真っ先に気になるのが鉢植えの植物達のことです。

都合良く雨が降ってくれたら良いのですが、休み明けには大抵干し草のようになっています。

可哀想だといつも思うのですが、旅行に同行させられないのでしようがない,,,,

 

そんな雨の降らない熱帯気候の東京にあわせて、鉢植えはサボテンや熱帯の植物にしました。

軒先に置いていったこちらの多肉植物も元気でした。苔をみると毎日猛暑だったのだろうと想像できます。

ぱらぱら細いモノが足下に転がっている。葉だ。しぼんだやつがまだぶら下がっている。

そうか水分の貯蔵タンクなのか。水分をあまり必要としないのではなく、蓄えた水分で補っていたのだ。

用のすんだ葉の落とし方も見事じゃないか。よく出来たサイクルで小さな世界を完成させている。

 

足の生えている分こいつよりも広い世界に生きている自分はどうなのだろう?

その証明がブランドなのだとしたら、ぼくも自分の小さい世界を獲得したい。

自然のサイクルは美しすぎて真似できないけれど。

それでも、さぁ、そろそろ、また、仕事に戻るとします。

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守 宮

先日珍しいお客さんが来店しました。

連日の暑さで通りの人影もまばらな中、ありがとうございます。

『ヤモリ…!?』

漠然とそう思ったのですが、あとで調べたらやっぱりこれはヤモリ。産まれて初めて見た。

皮膚は中身が透けて見えそうな位に半透明なベージュで砂のような擬態。鱗がないのだろうか、とてもマットで美しい。吸込まれそうな雰囲気。こういう雰囲気の生地はない。

頭が意外に大きい。いかにも蜥蜴らしい。目も大きくて、夜行性だから瞳孔は縦長だ。

でもやはり目にとまるのは指先でしょうか。未成熟な葡萄のよう。尖端がぷっくりしている。

最初は少しとまどいましたが、観察しているうちにだんだん愛おしく思えてきます。アニエスb.もきっとそう思ったのだ。

きっとぼくの気配は感じとっていたのでしょう。緊張してすくんでいるようでした。

もっと近くで観察しようと思い顔を近づけると、すごい速さで移動する。なんだやればできるじゃないか。

ぼくも慣れてきた、もう手で捕まえられるので草むらにでも逃がしてあげようと思う。かんねんしてしまったヤモリはおそるおそるぼくの掌に乗りました。

安全そうな草むらまでは掌から逃げないでくれよと両手で包んで運ぶ。けれど草むらに着いてもなかなかぼくの掌から移動してくれない。

変温動物だから暖かい掌が気に入ったのかもしれません。ますます可愛いやつだ。

でも仕事があるから後ろ髪ひかれながらお帰りいただく。ぼくは普段たいして仕事していないのに、いや、仕事をしているふりをしているだけなのに、こういう時だけ仕事しなければ、とか思う。これが日本人なのだろうか。

そんなことを考えつつ店に戻る。店は真っ白で、夜も明かりがついています。だからこの季節は虫が飛んでくる。

きっとそれを食べにきたのでしょう。

また会えたらいいなと思う。お客さんを見送るときはそう思う。

 

 

 

 

 


皮 膚

ネパールのハニーハンター

とても格好が良い、素敵。

これは服というのだろうか? 布を纏っている。

衣服というものは、第二の皮膚と形容されることがしばしばあります。

はじめて耳にしたとしても、大抵はなるほどとなるでしょう。

人は文明とともに公衆の面前では常になにかしらを身に纏うようになりましたから、人目に触れる衣服は、皮膚と呼んでもいいでしょう。

ただ、ぼくは正直にいって、そういう感じで衣服を見れたことがないのかもしれません。

皮膚って心の琴線に触れる、温もりや潤いやしなやかさがあるから。

そんな服、ほんとうにあるのだろうか? 作り出せるものなのだろうか?

ありましたね、ネパールのジャングルに。

ぼくはここから何かを学ばなければいけませんね…

 

 

 

 

 

 

 


釣り紀行 5月編

先日、三浦半島の城ヶ島へ魚釣りに行ってきました。

ずっと以前から付き合いのあるバイヤーさんと、仕事の話を兼ねて。

氏曰く、ファッションとは釣りのごときなり、だそうです。変わった人だ。

けれど不思議と帰る頃には、 ぼくも納得していた。

釣り道具は全部用意していただきました。

ぼくの荷物はビールだけ。駅前の商店でおもわず買ってしまう。なにせ天気が良い。

釣りをしようというのに不謹慎かつご迷惑かとは思いますが,,,ぼくは糸を垂らせばそれでいいのでご容赦ください。

せっかくのシチュエーションなのだから、もう少し非日常を感じたい。

もともと釣りは好きですが、見ているだけでも充分楽しい。ぼくは魚釣り人を肴にビールを飲むのだ。

とはいえ、駅から目的地まではまだまだ先。バスを降り、岬の灯台まではそれなりに歩く。

気がつけばビールはもうぬるくなっていた。


トンビ

 

さっきまで晴れていたのに急に暗くなってきた。冷たい風がふいてる。

『あれは鷹かな鳶かな?』話し声がします。

学術的にはどちらも同じ鳥なのだ。大きさの呼び方にすぎない。

そんなことを思いながら見上げると確かに飛んでいます。

 

空中で静止しているような鳥をしばらく眺めていました。

人はかがんでしまうような風のなかを、写真みたいに止まっています。

鳥のまわりだけ平和な世界かのように。

 

空の王者の気持ちは僕にはわからないけれど、

風の使い方はなんだか、、わかるきがします。

 


そわそわ

海のむこうで仕事をしている友人と7年振りに会う。

駅まで迎えに行きました。昨晩から緊張している。少し早く来てしまった。

ベンチに座って改札を見る。とはいえ、みつけたらなんて声をかけよう。

やっぱり緊張している。

ふと鼻先にいい香りを感じました。目線をそちらに向けるとこんな花が咲いている。

香りとともに過去の色々な心の揺れ動きを思い出します。

僕はこの友人と話をするのが好きなのだ。

 

まだ来ない。

こんなにそわそわするのは、いつ以来だろう。

ぼくに会う為に恵比寿に来てくれた友人を、不器用な笑顔で迎えた日。

 

 


にんじん

次回のコレクションのサンプル製作期間の最中です。

ファッションは傑作が出来上がったら発表、ではなく毎シーズンが傑作なのです。そうでなければならない。

クリエーションが極地に達したという意味ではなく、今の自分の最高傑作ということにしかならないのかもしれませんが。

関心をしめしてくれるすべての人に、今回もまた傑作です、と発表する義務がある。

感性を研ぎすまして日常に臨まなければ間に合わない。

断片的な記憶やヒントを紡いでストーリーとする。

だからこの時期は落とし物を探してずっと下を向きながら歩くような毎日。

いろいろな事が目に入る、耳に入る、脳裏をよぎる。現代に生きているとなおさらです。

それはPCがあるから。すべての環境が同期しているために、関係がなくてもとめどもなく情報が提供されます。

つまらないことを、おもしろく伝える。そういう情報が多い。

これをどう感じるか。悪い意味ではない? 今のぼくには違和感だけです。

もともとつまらないんです。それをおもしろいように仕立てて提供する。

少なくともぼくはクリエーションにおいてそれはやりたくはないのです。

いただいた人参を手にとった瞬間に、なにか惹き付けられた。

観察すると、真っ直ぐなことに気が付く。きっと手に取ったぼくだけにしか伝わらないけれど、自然の真っ直ぐ。

こっちのほうがずっと感動出来る。

ヒントになる。